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最高裁判所第三小法廷 平成5年(行ツ)155号 判決

東京都中野区南台一丁目一四番四号

上告人

奥山高一

東京都中野区中野四丁目九番一五号

被上告人

中野税務署長 森元常行

右指定代理人

村川広視

右当事者間の東京高等裁判所平成平成元年(行コ)第一二三号、第一二四号所得税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が平成五年五月二八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。

よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであって、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大野正男 裁判官 園部逸夫 裁判官 可部恒雄 裁判官 千種秀夫 裁判官 尾崎行信)

(平成五年(行ツ)第一五五号 上告人 奥山高一)

上告人の上告理由

第一点 原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな重要事項につき、著しく経験則に反する証拠の取捨、事実の誤認、理由不備がある。

(一) 八丈島の親戚や知人からの貸付資金の借入や、利息の支払いを認めなかったこと

〈1〉 本件での大きな争点の一つは、上告人が(株)毎宣や(株)ナカガワに貸与した金は上告人がどのようにして調達したものであるかの点である

〈2〉 すしやによる上告人の収入がとるに足らない程小さなものであったことは、被上告人も認めるところである。

〈3〉 また上告人が一方に於てすしやを営みながら、他方に於て金貸しを初めたのはすしやに来る客が、他から受取った小切手や約手で飲食代を支払い、お釣りの方が大きいときは、お礼をくれたことに初まる

〈4〉 しかし右は例えば一〇万円の小切手で一万円の飲食代を受取り、九万円のお釣を渡し、仮に五〇〇〇円とか一〇〇〇〇円のお礼を受取ると、それは余得とはなるが、その反面、それに應ずるためには常にある程度の現金を所持んていなければならないこととなる

〈5〉 そうしたことから上告人は八丈島の実家から金を廻わして貰ったのである

〈6〉 そしてそれがこおじて上告人はささやかながら金融業を兼業とするに至ったのである

〈7〉 然るに原審は奥山靖証人の

第一審原告から貸付資金提供の依頼を受けた時には、八丈島の親戚等から金員を借入れて、これを第一審原告に送金していた。そして、第一審原告から、逆に自分が管理していた富士銀行浜松支店八丈島出張所の第一審原告名義の普通預金口座に送金されて来た時には、右借入先への元本の返済ないし利息の支払に充ててきた

との証言は

その裏付として貸出した甲第三八号証の一ないし九の手帳には、ある時点における数字が断片的に記載されているにすぎず、右記載から直ちに借入先、借入日時、借入額及び利息の支払日、支払先、支払額等を具体的に認定することはできないし、また同証人の証言によれば同人は、右借入に際して借入書等は作成しておらず、右手帳にもその借入の都度借入先、借入金額等を記載していないし、右借入先等を第一審原告に知らせることもなく、また第一審原告から送金されつきた金員についての元金返済分と利息支払分の内訳も明らかではないうえ、第一審原告との間において右借入及び元本、利息の返済についての確認もなしたことはないというのであって、結局のところ右手帳の記載及び同証人の証言も第一審原告が主張する昭和五〇年分ないし昭和五二年分の支払利息について、その前提となる借入れの事実及び利息支払の事実を認定するに足りないものというべきである

と認定し、上告人の主張を採用しなかった

〈8〉 しかしながら右上告人から上告人ないしは上告人の貸付先に系金四一〇〇万円の金が送金されていること。またその内訳は甲一の一ないし一四並に上告人本人の一審の尋問によって明らかなところ、奥山靖の証言並に前記甲三八は右を補強するためのもので、それだけが独立したものではない

〈9〉 そしてこのことは八丈島からの借入金に対する利息の支払及び元金の一部返済についても同様であって、上告人の妻ないし上告人名義で送金された甲二の一ないし一二の託金九八九万五〇〇〇円についても、内金一八三万円分のみが元金の返済分で、他は利息の支払分であることを明らかにするためのものであった

従って原判決が右の如く資金の借入や、利息の支払を否認する一方、上告人には被上告人に利息に相当する税金を支払えと云うのは片手落ちであり、後者の税金は前者の借入資金によるものであることを忘れた辻褄の合わないものであり、甚大な事実の誤認か又は法律の解釈適用を誤った違反があるものと云うべく、破毀は免れないものと思料する

(二) 上告人は原審に於て、借主自身の昨年の「他で割引いた」とする新しい証拠を提出したにも拘わらず、それに対する判断をしないで、上告人の主張を容れなかったこと

〈1〉 また上告人は原審に於て、(株)ナカガワ振出の昭和五一年八月三日付の第一審判決別表二の〈2〉のNo.1の番号9の額面金九〇万二九八〇円の約手につき、甲第二五号証の三を証拠に、右は(株)ナカガワが別の「新田」と云う者に割引をしてもらったもので、上告人に於て割引いたものでないと争った

〈2〉 しかも右手形分については、右の別表に上告人が入金したとする預金口座名の記載もないものであり、その点からも再検討に値するものであったにも拘わらず、無視されたものであり、金額が九〇万円余であるからと云って許されるべきものでないと思料する

従ってこれは民証第三九五条一甲六号違反として、破毀さるべきものであると主張する

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